意を決した男性

彼の部屋で話が途切れたとき、妙な空気になった。私はなんとかこの妙な空気を打破しようと、あえて空気を読まずに、明るく努めた。

そうしていないと駄目な気がした。

嗜めるように名前を呼ばれて、思わず口を止めた。

ゴツゴツとした冷たい指先が頬に当たって、思わず肩をすくめてしまう。

しばらくその状態で時間が経った。

お互いの浅く短い呼吸音と時計の秒針だけが聞こえていた。

触れられている頬に意識が集中する。

彼の顔は見なかったけれど、ほんの微かに震える指先と、呼吸から痛いほど緊張を感じていた。

「意を決した男性」というのは、どこか抗えない色気を孕んでいる。

こくっと唾を飲みこみ喉が鳴る音がした。

喉の奥がぎゅっと絞られるような感じがして、わたしは一層身を固くした。

顎先にするすると、やさしく、指がおりてきて、くっと上を向けさせられる。

一瞬、熱帯びた目と視線が絡んだ。それだけで逃げ出したくなった。

少し泣きそうにもなったし、少し怖くもあった。

こつんと額がぶつかる。息のかかる距離で、鼻と鼻を軽くくっつける。

ゆっくりと、唇で唇を挟まれた。

よくわからないうちに、腕が腰に巻きついて体を思い切り引き寄せられる。

彼の柔軟剤の匂いに包まれる。

押され、座布団の上に転がる私に彼が覆いかぶさり、小一時間そうしていた。

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